2017/12/08

正多面体の話(その1)

阿部さん推奨の本

 阿部恒さんにその昔、正多面体のことをお尋ねしたところ、『高木貞治という数学者が書いた(数学小景 岩波書店 1943年初販 1981年改訂版)というのを読んでごらん。』と言われて読みました。名著で、面白くて一気に読みました。
 ここでは、いくつかの楽しい図形パズル問題の解説と共に、「多面体」という幾何図形のことが、いかにも明瞭に、そして洒脱な文章にて解説されていました。
 どうか皆さんもこの名著、少なくとも「正多面体」及び「図形パズル」にご興味のある方は、ご一読あられんことを! 難しい数式など出てきません。

 ところでここで「正多面体」の話を始めると、そこには「キューブ」が含まれるので、ついつい話は長くなります。 で、今回は総括的な正多面体の紹介だけに留めましょう。そこでまずはともかく、「正多面体とは何か?」の定義から見て行きましょう。

(正多面体の定義)
 それぞれが合同(=同じ大きさ)の1種類の(正多角形)から構成される凸型立体で、頂点部分の状態が全て等しい(=同じ数が集まった)図形は、全部で5種類だけが有り、それを(正多面体)と言う。そしてその5種類は次の通り。
(正3角形)から出来る「正多面体」は次の3種
頂点部に正3角形が(3つ)集まったもの→「正4面体」
頂点部に正3角形が(4つ)集まったもの→「正8面体」
頂点部に正3角形が(5つ)集まったもの→「正20面体」
 正3角形の一つの角は(60度)だから、(6つ)集まれば60度×6=360度で、平面になってしまい、立体になれないので、上限は5となる。

 正多角形の正3角形の次の(正4角形=正方形)で考えると、
頂点部に正方形が(3つ)集まったもの→「正6面体=立方体=キューブ」
 正方形の一つの角は(90度)だから、(4つ)は90度×4=360度で平面とて、上限は3となる。
 正多角形で正方形の次は(正5角形)で、その一つの角は(108度)だから(3つ)集まったもの→「正12面体」
 4つは108度×4=432度で無理と分かり、結局上記の5種類だけとなる。

 おっと、言うまでも無く高木先生は、こんな無味乾燥の説明ではなく、実に魅力的な解説をなさっておられ、そのユーモアに溢れた文章に、思わずくすっとなりますよ。

 ともあれ、おりがみに熱中して10年くらい経った頃、阿部さんと会え、そこから「おりがみと幾何学との実に楽しい結び付き」を教えてもらって、上記のような(正多面体)などのくふうに夢中にさせられたわけで、その頃を思い出すとふっと笑顔になります。
 かくてその頃楽しくくふうした(おりがみ正多面体)を写真紹介してみましょう。

おりがみの「正多面体」全5種


それからずっと後での、正多面体の楽しいくふう

紙工作での(入れ子細工)の「正多面体」
正4面体→立方体→正8面体
正8面体→正12面体
正12面体→正20面体
(入れ子細工)の正多面体は、サンリオの(ビバ!おりがみシリーズⅤ)として、1992年に、横浜国立大学の松本久志先生の監修をいただいて「おりがみ面体」として上梓しました。
 おりがみと題しましたが、内容は(紙工作)でした。ただし、(おりがみ)の表題にしたことは、その紙工作の展開図の作図を「おりがみを折ることで、角度や寸法を割り出したので、おりがみと題することに躊躇はなかった」のですが、…書店ではあまり売れませんでした。
 しかし関係者の評価は高く、(多面体)の名を(遊面体)としてくださったのは、装丁をしてくださったデザイナー氏の高評価からのご厚意でして、この題名に大喝采してくださった、イタリア在住であられた物理学者の藤田文章先生は「Origami Play-hedron」というおしゃれな英訳名を考えてくださいました。これは多面体のことを英語で(Poly-hedron)といいますが、そのPoly(多数の)の語を、Play(遊ぶ)にしてくださったのでした。
 でも残念ながら、再版には遠く及ばず、この英語のタイトルを使わせていただくことはありませんでした。
 住まいの近くの書店で、これが並んでいるのを見たときは、すごく嬉しかったものの、いつまでも売れないで、汚れ防止のためか、やがてビニール袋に入れられてしまったことでした!
 この頃、美しい女性のヌード写真の本が、立ち見されるのを防止するためにビニール袋に入れられて、これを世間では(ビニ本)と称しました。 かくて私は「とうとうビニ本の著者となってしまった!」などとボヤいたものでした。でもこれ、美しい女性のヌード本と同じくらい楽しい、感激の一書だと自負し確信しています。
 でもまあ悲しいことに、この近くの書店も、そしてこの本も、遠の昔に無くなっていますがね。

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