2017/06/29

“部分反転” はパズルの宝庫

 例えば、おひなさまをくふうするとき、顔には紙裏の白を出したいとの(部分反転)の思いが起きますよね。同様に、伝承作品の「奴さん」について、これって人の姿ですから顔の部分には紙裏の白を出したいと考えるのは、当然の発想ですね。

 そこでそれを具体的にやってみてください。…ほらっ、それってパズルでしょう!…もちろんこの場合、ただ折るだけでするのが条件です。

 さて、これがうまく出来たら、今度は顔の中央に“合わせ目”のあるように、つまり鼻筋の通った形で考えてみてください。するとそれもパズル。

 両方とも無事に出来たら、次には“腰の部分”の反転をしてみてください。これはかなりの難度のパズルです。

 そして3問共解答出来たら、「奴さん」を「袖振りやっこ」の形にして、その顔部分の反転を。…とまあ、このタイトルのーパズルの宝庫ーがご理解いただけるでしょう。

 ということで、ここでこの部分反転パズルのルールを明記しますなら、
1、折るだけで反転すること。つまり切ってはいけない。
2、完成形のサイズが変わってはいけない。

 私は、「おりがみには、“ルールが無いのがおりがみのルール”。」なんて言って来た者ですから、これは変節?なんて思わないでください。こと(おりがみ)をパズルと考えた場合のみ、あるいはその特定のパズルについてのみルールは必要になるでしょう。
 つまりそういうことなんです。おりがみ全体にはルールなど不要という思いは不変です。





2017/06/25

サイコロ、すなわちキューブの魅力

 キューブの六つの面に、1〜6までの数を示したものがサイコロですが、その場合、背合わせ面の数字は、足すと(7)になっています。そのスタートの数字の組み合わせのことから、それを「一天地六」と言っています。やくざ映画なんかで聞く言葉ですね。

『お豆腐は、賽の目(小さな立方体の形)に切って。』料理場で聞く言葉ですね。

「ぞろ目」に「丁半(偶数、奇数)」どちらも2つのサイコロの目の出方を指す言葉。これは時代劇での常用語ですかね。

『賽(サイコロ、采配のこと)は投じられた。』シーザーがルビコン川を渡るときの決断の言葉だそうですが、…左様にサイコロは昔から在り、そして身近なものです。

 ところで30年近く前、2枚のユニットで、その表面の色の部分が、紙裏面に1〜6までと増えて行くように成って現れ、加えて天地の面の合計が7となるようなものが出来たときは、自分でも驚喜したものでした。(この“おりがみサイコロ”の折り方は、昨年30年ぶりに復刻出版していただいた「折り紙百科 日貿出版社」に載っています。)

 さて私のおりがみでのライフワークのテーマは「キューブの探求」とは、諸所で言って来たことですが、実は亨保19(1734)年の「欄間図式」という最古級資料の中に、「玉手箱」と題したキューブの作例が、完成形のみのイラストで示されています。その折り方に関しましては、本多功氏が昭和の初期に出版された著書の中に3種のスタイルで図解紹介されております。かくしてこのことは、伝承の証言とでも言えるでしょう。

 ともあれこの資料を見るに、キューブの魅力の探求は、古くして新しい課題と言えるようです。

            画面には(1)(2)(3)が見える。
おりがみダイス(2枚組みのユニット式)



最古級の資料「欄間図式」


キューブの断層
(ここには、正方形、正6角形、菱形、シルバー矩形、の4つの図形が示されます。)

2017/06/21

ガチャガチャ、今は300円もありますね!

私の興味の限界

 ガチャガチャは、10円時代からのファンと言いました。そして今は200円になったとも言いました。しかし数年前から300円のものが出て来たことを知っていました。

 残念ながら、もうここには私の興味を引くものはないようです。また銃器類も無いようです。しかし200円のとき、ものすごく精密で、タマが飛ぶことはもちろん、オートマティックのものや、弾倉が回転するもの、薬莢を排出するもの、…ともかく想像以上の精密さを持つものが出て来て、…もう私のミニュチュアおもちゃピストルへの夢はこれで完結したようです。でも、真の夢のものは100円の頃の、“おもちゃらしい”のが理想だっ
たようです。
 このことは「おりがみ」においても同様で、…やはり私が思うおりがみの理想は、復元を楽しむ気になれるもの。そしてガチャガチャは、200円が上限のようです。


100円のガチャガチャでの、嬉しい「タマ飛ばしガン」!

自動排莢のウィンチェスター(200円)

弾倉が回転する6連発リボルバーピストルとその弾

2017/06/17

未刊のプラン

積み重なる新しい本のプラン

 内山興正師は、あるときこんなことを言われました。『傑作とは作ろうとして出来るものではなく、自然に生まれ出るものにこそ傑作はある。そしてそんな傑作が出来たとき、それを枕元に飾り、うっとりと眺め、そして眠りにつきます。かくて3日はいい夢が見られます。』こんなことをおっしゃる先生を、私は勝手に人生の師として敬愛したことです。そして私の場合、傑作ができたときそれを、枕元ではなくテレビの上に飾って、3日うっとりと眺めたものです。…でも、テレビの形態がどんどんと薄くなり、その上に飾ることが出来なくなり、…さらに家中に雑物が増え、飾るスペースも無くなってきて、こんなこともしなくなりました。

 ところでその増え続ける雑物の主たるものは、おりがみの図版や原稿やコピー類、そして折ったおりがみで、出来過ぎて、生活スペースをどんどんと侵食します。

 出版ということがあまり求められない時代となったのなら、もうそんな原稿や図版を書くことを止めればいい、そうとは判っていても永年の習い性は止められないようです。そして、これまでの出版数が170では中途半端な数だ、などとおこがましくも考えて、あと30の本を書こう!そしてその撮影用の作品を折っておこう!

 先に言いました通り、私の本好きは終生変わらないようで、依頼など無くても、思い立った企画を具体化する原稿を書き続けているのですが、…それはもう30をはるかに越えています。そしてこれらは、別に陽の目を見なくても、あまり残念とも思わなくなりました。だってそれは腐るものではないからです。それはもう、本書きの職人気質の生きがいとでも言うもの、楽しみの産物とでも言ったらいいでしょうか。私には、実に頼もしい孫が何人も居ます。もしか彼ら、彼女らは、そんな(おじいさんの夢)を理解し、それを形としてくれるかな? そんな思いも夢!

 いやはや、妙な話は止しましょう。ここに “未刊のプラン” の、その顔のいくつかをご紹介してみましょう。ドヤ顏になりそうなのを、懸命に堪えながら!!!

2017/06/13

訂正します。そしてー楽しい思考実験

まずは訂正

 4月21日の「つぶやきエッセー」で、「ミクロの決死圏」という映画の物語作者を、アイザック・アシモフのように書いてしまいましたが、先日改めてハヤカワ文庫のこの本をひっぱり出して解説を読んで、私の間違いを知りました。
 それはまず映画は、オットー・クレメントとジェイ・ルイス・ビクスビィという二人が考えたストーリーにより、粗筋が最初に出来て、それをノヴェライゼーションにて見事な作品にしたのがアイザック・アシモフさんだった。また彼を生物学者と言いましたが、正確に言うと生化学者でした。

 さてこのような(訂正記事)だけではなんですので、「人間はその体の中に宇宙を持っていることを、アシモフさんに教えられた。」と言ったことに関連付けて、おりがみで無限小と無限大を“同時に知る!”と言う話をしてみます。

現実から(思考の実験)へ

楽しい思考実験

 今上に示した図の中の半分折りのAで、おりがみを(半分、半分、…)と折ってみてほしい。この半分折りにはBのスタイルもあるが、こちらだと(長方形→正方形→長方形、…)と二つの形を繰り返すのに対し、Aなら(直角二等辺三角形)一種の形のみの繰り返しとて分かりやすいからだ。
 ところでこの折り、1辺が15cmのおりがみで実際に試みていただくとお分かりの通りに、5回くらいでもうすごく大変になり、6回が大体限度でしょう。で、ここから先は、(頭の中で折る、思考実験)として考えてみてほしいのですが、…半分、半分、と言いましたのは、面積が2分の1となるという意味ですね。
…しかし、この面積の半減に対して、倍、倍、…と増えて行くものがありますね。そう、厚さです。

 さて、このおりがみの最初の(厚さ)を(0.1mm)としましょう。今、実際に折れたものを(6回折り)で見てみますと、面積は64分の1(約3.5平方センチ)で、厚さは6mm強となりました。そしてそれが現実での折れる限界でした。
 そこでこの先は、頭の中でのイメージとして、…この折りの行為を(20回)続けたとしたら、面積と厚さはどのくらいになるか? 考えてみてください。

 面積は(百万分の1)より小さくなるのに対して、その厚さは、なんと!100メートルを超えるでしょう!
 かくてこの行為を100回も続けたら、…その結果はご想像に任せます。ともあれ、おりがみという遊びを楽しむとき、なんとも気持ちが壮大になれるのは、わずか100回の折りぐらいで、(無限小)と(無限大)を同時に思い描けるからでしょうね。

 あっ、もう一つ訂正がありました。4月15日の「教材案」の中で、(シルバー矩形と穏やかな日常)との小見出しの一文を記しましたが、本文には(穏やかな日常)に関連する記述が見当たりませんで、…これって、シルバー矩形とは日常生活の場にありふれた形だということから、何かを言いたかったようですが、…無意味な小見出しでした。
 思いばかりが先走って、訂正が発生するようですね。

2017/06/09

おひなさまの事件!

おひなさまの“よろめき”!?

 平成3年の夏、日本文芸社から出版された「最新かわいい折紙のすべて 四季の行事、メルヘン、おひなさま」の一書は、その表題通り、自身で本当に “かわいい” と思える出来のものです。

 その第2章は(折りびな十二景)のタイトルで、10種の “おひなさま” の折り方を紹介しています。そして口絵ページでは11組のカップルが並んでいます。
 十二景、10種、11組?…なんだか数字がバラバラですが、…実は中で「六歌仙」も紹介しており、その中の在原業平と小野小町とを “おひなさま” に見立てられますよ、という事情からこれが11番目のカップルで矛盾はないのですが、…事件が起きました!

 口絵用の作品は、折ったものを出版社に渡し、編集の方とカメラマンの方にお任せして撮影してもらいます。

 と、出来上がって届けられたものを見て、…「えっ、ええっー!」と驚き、そしてすごく愉快になり、声を出して笑ってしまったのですが、…実は2組の男雛と女雛が入れ代っていたのです!…こりゃ源氏物語の世界なら珍しくないでしょうが、現代ではスキャンダルと呼ばれかねない事件?!

 まあ編集者もカメラマンも、折り方ページのチェックなしで、姿と千代紙の柄の組み合わせで、マッチしていると思われたのでしょう?! ともあれ、今でも思い出すとクスッとなってしまいます。

 でも皆さんには、下の写真をご覧になっても、その秘密の2カップルはわからないでしょうね。ふっふっふ。

さて、お相手を取り違えたのは、だれとだれだ?

2017/06/05

ファンタジー作品の追加公開をしました

下記作品の追加公開をしました。

・短編ファンタジー「かばのポポタン」 後編
・長編ファンタジー「昔、始まりの物語」 第一章「タカミ」

お楽しみいただけたら嬉しい限りです。

ページ右側のebooks欄より、PDFでご覧いただくことができます。

2017/06/01

“右回り” と “左回り” の大いなる変化

“右回り”と“左回り”の不思議な相違

 この思案については、仲間と思う同志から、そんなのはつまらない!と揶揄されましたが、私はくじけません。

 少なくともおりがみにおいては、(同じ折り線構造のものを、右回りに折るか,左回りに折るか)あるいは「ユニットおりがみ」において(右回りに組むか、左回りに組むか)で、結果の造形が大いに変化して面白く楽しいのです。それは決してつまらない思案ではないと確信しています。

 ともあれ、ここにその実例のいくつかをご紹介します。この試みが、理論的につまらないか、面白いかではなく、判定は、造形の面から判断してほしいと思います。

 なお化学の方で、たんぱく質の基となるアミノ酸の分子には、(L型)と(D型)の二つがあるが、それは “右回り” と “左回り” で性質は異なる。ただ何故か地球には(L型)しか見付かっていないとのこと。そんなトピックをインターネットで知りました。

 つまりは、この “右回り” と “左回り” は、決してつまらない話ではなく、現にそんな分子構造の右左の差の性質の違いといった研究(?)で、ノーベル賞をとられた博士も居られましたよね。




右回りと左回りの折りの結果の違いを実感して!

 “反転” は新次元の扉!


 反転とは、(ひっくり返す)ことです。でもそこには(2通りの意味)が在ります。すなわち(上下左右の反転)の他、(全体を“裏返す”)という行為もあるのです。これって、門外漢の素人の妄想では、「パラレルワールドへの転化」のように思われますが…??


 “岩” と “波” 

 この世には、形は有るも、かといってその形を特定出来ないものは無数に有ります。具体的に言えば、「雲の形」「水の形」「波の形」「煙の形」「砂の形」「岩の形」「山の形」…。

 ところがここに、「フラクタル幾何学」というもので、これらを方程式で説明してしまうという、すごい人が現れました。ベノア・マンデンブロというイギリス人学者です。

 さて、大層な話をした後で、そんな理論と関係したおりがみの紹介か!などと期待される方には、まったくの肩すかしですが、正直そんな実践を試みるには、そもそも能力に欠けています。従ってここでご紹介するのは、“無作為に折った単純な基本的折り形を、半開き状態にして、そこに何かをイメージしてみる”という(ずぼらなくふう法)のことをイメージ・ゲームと名付け、一時熱中したことがありましたが、そんなイージーなくふう法による造形で、「岩」や「波」のイメージを得ました。写真がそれです。

岩に生えた海藻(部分反転による色変えによる造形)と小エビ

海流に遊ぶ「ひとで」
波の上を飛ぶペリカン


無限大へ!と無限小へ!とを同時に折る!
 “宇宙” と “素粒子” 

 私たちの住む世界は、無限大と無限小とが入り混じって出来ているそうです。TVで教えられるところによれば、この宇宙は加速度的に膨張しているのだそうだし、その逆に我々自身の体とは、60兆個ほどの細胞で出来ているが、その細胞の中には核があり、そして多数のミトコンドリアが共生していて、…細胞もミトコンドリアも、分子原子で出来ており、その原子はまた核と電子から出来ている!

 でもこれでおわりではなく、原子核はさらに小さな複数の(クオーク)からなるのだとか!…いやいや、現代の科学者は、さらにこの先は(ひも)という振動する極小の物質で成り立っているのだ、との理論を研究しているとか。すると我々は皆(無限小の物質)の無限大の集まりで、結局宇宙そのものと同化するようだ。

 さて筆者は、おりがみとは、そんな(無限大)と(無限小)をいっぺんに実感出来る気宇壮大な遊びであり、内山興正師の言われる『俺神(おれかみ)!』との教えを、この頃しっかりと実感しているのです。