2019/02/04

織り紙の先輩

あるサロンで。

 その昔、伏見康治先生が主催されていた、サロン的な集まりに「アルス・プラス」という名の会がありました。

(アルス=芸術)の行為に、例えば(数学)とか(物理学)とか(パズル)などの考えをプラスすると、どんな新世界が出現するか?…まあ、そんな趣旨の夢を追う方々の集まりだったと理解していました。 名だたる大学教授や著名な著述家や美術家などが居られることは、後刻、徐々に分かって来たことでした。

(おりがみ)という、伏見先生と共通の興味対象があった故に、本来ならとても参加出来ないこんな集いに、私は参加させてもらえたのでした!
 最初は詳しいことは知りませんでしたが、錚々たる著名人の集いらしいとて、当初、私はとても落ち着かない気分を感じたものですが、でも勇気を絞り出して参加させていただきました。 初参加のきまり(?)としてか、何かの発表をせねばなりませんでした。熟考の末、「おりがみ=Paper folding」では芸がない?なんていう浅慮から「織り紙=Tape weaving」につき発表しました。丁度その頃熱中していたからでもあります。

 汗をかきかきプレゼンテーションをなんとかやり終えたとき、後ろから私の肩がそっと叩かれ、振り返ると、そこに笑顔で封筒を差し出しておられる方が居られました。
 その封筒を開けてみると、何と(織り紙)の文字が飛び込んで来ました!そしてその中身は、(長いジグザグの6枚の厚紙の印刷物)で、それを(織る)と「(菱形30面体=RHOMBICTRIACONTAHEDRON !)の地球儀」になるという、見事な立体造形パズルでした! 勿論家に帰ってから楽しませていただきました。 その場で出来るほどやさしいパズルではありませんでしたから。

 またさらに、その後の座談の場では、(梱包用のプラスチックテープ)から(織って)作られた、大きく強くボールのように突いても壊れない、見事ないくつもの「幾何立体」が、皆さんに披露されました! 私は即座にその造形物たちの魅力に心から引き込まれてしまいました!
 なおこのとき横浜国大の松本久志先生も参加されており、この(織り紙幾何立体)に、私同様驚嘆されておられたことをはっきりと覚えています。

 さて、そのとき私の発表物は、これまで諸所で見ていただいたような、鳥やどうぶつなど抒情的な造形のものでしたが、この方のものは明らかに幾何図形に関わる造形です。私がこのブログの最初の方の項でご紹介した「織り紙の“正多面体”」は、このときの経験からのものです。
 そうです!この方は別宮利昭(べつみや としあき)氏とおっしゃる、立体造形パズルの著名な作家で、まあ(織り紙の世界)に素晴らしい先輩が居られた!ということを、ここに感動と喜びを以って知った次第です。


(1本テープでの)織り紙の「りす」

 私のそれまでの「織り紙」は、ここまで何度か見ていただいてお分かりの通り、ほとんどは抒情的な造形でした。でも別宮氏の「幾何立体図形」を見せていただいてからは、私もそれなりに(私らしさ?!)を加えた、紙テープでの「正多面体」を作ってみたのですが、それは既に1昨年ご紹介しました。
 でももうお忘れになったことでしょうから、下に再掲してみます。

 なお私のこのブログを「92 Origami Plus」としたタイトルの(プラス)は、ずっと単純な(おりがみ以外の私の興味の付け足し)の意なのですが、まあその根底には「アルス・プラス」への憧れの気持ちが在るのは確かです。

 なお、数は多くはありませんが、この(織る造形)は、伝承の中にも有ります。そしてそれらは、機会あるごとに著書に紹介もしてきました。
 例えば(セパタクロウ)という競技に用いられる、藤(とう)編みによる(サッカーボール状の球)を、紙テープで織るものだとか、沖縄のアダンの葉での(星っころ)をやはり紙テープで織ったものなど。


これも1本テープでの織り紙の「ねこ」

















織り紙の「正多面体5種」(再掲)
この中の一番大きい「正20面体」の構造
は、別宮氏の造形と同じものかも知れませ
が、確かなことは分かりません。なおその
あたりのことは、パウロ・ムラチンヨさん
のご支援により、ドイツで出版された「国
境の無いおりがみ Origami ohne Grenzen 
AUGUSTUS VERLAG 2001年)にて別宮氏
    からのご教示のことなどを掲示しました。    
別宮氏との最初の出会いのときに頂いた
織り紙の「地球儀 DIAMOND GLOBE」が
 これです。見事で楽しいパズル立体ですよ。 

0 件のコメント:

コメントを投稿