2017/08/28

富士山

リクトの第1作

 先に、リクトの傑作「ふね」と「かに」を紹介しましたが、実はその前に「富士山」というかわいい作品をもらっていました。確か5歳になる前のときのことだったと思う。
 娘のファミリーが相模原市に居たことは、「不思議なところにおりづるが!」のエッセイで明かしたところですが、そこから引っ越した先は富士宮市です。

 家のテラスからは大きな富士山が眺められる! で、リクトは、雨の日には「今日のふじさんは、お風呂に入っている。」雲が中腹にかかっているときは「今日はヒゲを生やしている。」などと擬人化した言い方をして親しみを覚えているらしい様子。
 そしてある日、その富士山をおりがみで折った。下の写真がご本人が折ったもの。私にはこの(おにぎりか栗みたいな形)をしたものは、…私ならもうちょっと(すそ野)を長く、などと思うも、まあやはり本人の感覚をそのまま記録しておこう! ともあれこれも「ふね」や「かに」同様、しっかりと立つように出来ている。これも評価出来る点だ。

リクト富士山


 ところで先に、彼の「ふね」に手を加えて「帆かけ舟」にすることを楽しませてもらったが、数日後、またこれに手を加えたくなってしまい、さらにリアルな「帆かけ舟」にしてしまったところ、その背景に「富士山」が欲しくなり、これまた手を加えることを楽しませてもらった。(手を加えたのは、てっぺんをちょっと折って平らにしただけ。あとは
「富士に従う山々」で、すそ野を長く見えるように演出したに過ぎません。)
 こうして写真に撮ってみると、いやーっ!なかなかいい絵だね!


(へさき)と(とも)を、勝手に明瞭にしてみた。

2017/08/24

オバマさんのおりづる

アメリカ大統領の広島訪問

 昨2016年の5月27日、日本の要望に応えて、オバマさんが大統領在職中に広島の平和記念公園を訪問したニュースは、久しぶりに心を暖かくしてくれるものでした。そしてその折、大統領自身で折ったという(4羽のおりづる)が、まずは出迎えの小学生と中学生の女の子と男の子に1羽づつプレゼントされ、続いて訪れた平和記念館の芳名録のそばに2羽が置かれていたという。
 この嬉しいニュースがテレビで報道されたとき、すぐに録画した。そこには芳名録に置かれた2羽が写っていましたが、下にその録画を示します。加えてそのときのオバマ大統領のメッセージも。(NHKの総合第一テレビより。)

オバマさんの折ったおりづる


オバマ大統領のメッセージ


 きれいなプリント千代紙で折られたそのおりづるは、とても美しく折られていて、オバマさんって、器用なんだなと思いました。
 ところで小・中学生にプレゼントされた方だと思いますが、おりがみの同志で、ノアの西横浜支部を作られた柏俣美枝子さんは、どうもそのおりづる2羽の折り方が、ちょっと違っているように思われたとて、広島まで行かれて(!)確かめたところ、次のような折り方のものだったということなのです。

羽の位置が高くなる折り方

 つまり、首を細くするための折りで、谷に折るところを山に折ったものだった、というのが柏俣さんのご指摘でした。
 さて皆さんは、こんな違い、どうということも無いと思われるかも知れませんが、少なくとも私には、嬉しい驚きの情報でした。正式な折りとの違いを、下の写真で見ていただくと、柏俣さんのご指摘通りに、羽の位置が上がるのです。この微妙な折りの違いを生かして、実に久しぶりに「巣ごもりのつる」と「リアルな(複合)の鶴の立ち姿」の二つを収穫しました。柏俣さん、実に示唆に富む情報をありがとうございます。

ふつうの折り方(右)より、羽の位置が高くなる。
羽位置の高いオバマつるからくふうした「新・巣ごもりつる」
上の造形に(足)を複合したリアルな姿

 ところで広島記念公園といえば、そこにおりづるを高く捧げる少女の像が有名ですね。千羽のつるを折って、健康を取り戻したいと願うも、それが叶わず途中で亡くなってしまった原爆の犠牲者、佐々木禎子さんが、この少女像のモデルと聞きました。
 ところでこの捧げ持たれたおりづるは、(フレーム状)になっていて、これもまた一つの美しいおりづるの(変奏曲)と言えると考え、ずっと以前くふうしておりました。
 これ、簡単なもののように見えるかも知れませんが、かなり難しい切り抜き作業なんですよ。ともあれ、下の写真でご覧ください。

広島原爆少女の捧げるフレームおりづる

 あ、そうそう。このフレームおりづる、…私の許には小さな新聞写真しかありませんので断言は出来ませんが、…羽の位置が高いように見えますので、ひょっとすると!?

2017/08/20

孫の作例

「かに」それは傑作です!

 私、とくべつに身内を贔屓するつもりはありませんが、今、接しられるこどもといったら、時折遊びに来てくれて何時間か遊んでいる孫の様子を見ることしかありません。そしてほんの偶の出来事ですが、おりがみの傑作に出会えることがあり、そんなときは、心から嬉しくなります。

 かつて友人や知人と頻繁に会えたような時には、彼ら、彼女らのこどもにも会え、その
結果、見事な作品に出会えることもあり、そうした、もしかしたらいずれ忘れられてしまうかも知れないような造形を、出版ということが盛んだった時期には、すぐに記録して紹介したりしていました。(私自身の息子と娘にも、1点づつですが傑作があり、本に紹介しました!)
 しかし、今では会えるのは身内の孫くらい。それは、もう外出して人に会うのがかなりしんどくなった年齢によります。加えて友人知人も同様、皆結構高齢なんですね。

 ところで、孫の彼ら、彼女らが、自分のおじいさんがおりがみの本を書いているなどのことを知ったのはつい最近のことで、なおかつ、そう親から聞いて知ったといっても、それがどんなことなのかは、あまりよくは判っていないだろうと思う。ただ遊びに来たおじいさんの家には、おりがみが高く積み上がっているので、遊びの合間に、おりがみに興ずることも多くあるも、多分幼稚園の中と同様、一人一人勝手に折って、切って、楽しんでいるのです。(5人の孫の3人は、既に小学生となっています。なお私は、折り方を教えたことはありません。『何か折って』と言われれば、「はばたくとり」などを折ってやることはあります。それくらいです。)

 さてこの春休みのこと、娘のところの2番目の男の子が、私の目に「おっ!いいな!」と思える造形をささっと折って『かにだよ。』と、皆に見せてくれた。これ、最初は『ふねだよ。』と言って、それも「いいな!」と思ったが、すぐさま(へさき)と(とも)をはさみで切って、「かに」にした次第。
 「ふね」と言っていたものは、(かにのはさみ)をまっすぐに戻したもので、ちょっとクレオパトラのふねのように、豪華な感じのものと私の目には映りました。
 ともあれ、彼の折ったままの「かに」を写真紹介してみます。なお彼の姉さんルナが4歳のときに、傑作「へび(その年の干支)」を作り、これはすぐに図解して、そのプリントを同志の皆さんにご披露したりしました。(息子と娘の傑作もそこにイラスト紹介)

 あまりに身内の話とて、ここでは5歳のリクトの作品の紹介だけに留めます。さてこの夏休みにも遊びに来てくれたが、今回は傑作には出会えなかった。ただ、いちばん小さな女の子ミレイは、切り紙に夢中! おりがみを折ってから切るもので、幾何模様のかなり美的なものをさっさか切る! 思うに、幼稚園に教え方の上手な良い先生が居られたのではないかと思う。つまり、切ったものを開くと、どんな形になるか?を、それなりに予想してやっているように見え、それは切り紙の魅力を理解しているようで、そこに良い指導があったと思われるからです。
 話が長くなってしまいました。リクトの傑作紹介をしましょう。

リクト5歳の「かに」

 さてこの「ふね」と「かに」とを見て、久しぶりにおりがみへの意欲が出、「ふね」には(帆)を、「かに」には(め)と(あし)を付けてみました。まあ、常套的な形かも知れませんが、ともかく本当に久しぶりにイマジネーションに刺激を受け、喜んでいます。

ふね
かに
勝手に(複合)のものにしてしまった。

2017/08/16

二宮金次郎さん

 バスの一番後ろの席に座って、ふと前の乗客を見る。実に過半数の人が、じっとスマホを眺め、指でしゅっしゅと操作している。いや、別にバスに乗らなくても、道を歩いていても、手のスマホを見つめ続けて、前も見ずに歩いている怖い人の多いこと!

 小学生の頃、校庭に薪の束を背負って、前を見ず、一心に読書しながら歩く二宮金次郎さんの石像が有りましたが、今の世の中、男女共に金次郎さんで溢れているようです。

 日本折紙協会(愛称ノア)の設立発起人のお一人で、…実は私もそこで一時期働かせてもらった、紙の企画商品(ノベリティ)開発の会社(ぴぽ社)の社長であられた、長野耕平氏が、…今から50年ほど前、一緒に宮下温氏のところを訪問する途中で言いました。
『笠原君、私の思うに、将来おりがみをコンピューターでする時代が来ると思うよ。』
 私は長野氏に、強く反論しました。
「そんなバカな! おりがみって抒情的な感性の世界ですよ。コンピューターなどという計算しか出来ない機械にやれるもんですか。」
 皆さんお分かりの通り、長野氏の予想が当たっていたようで、私は完全に負けました。
そして、今やコンピューターおりがみの溢れる時代となりました。

 でも負け惜しみで言うのではなく、コンピューターで出来るものと、人間の感性から生まれるものとは、そこにはっきりと区分が有るだろうと思います。
 因みに、下に紹介するような造形には、コンピューターの計算など入り込めないものだろうと思います。だってこれを取り出した私自身、これを作ろうとして折ったわけではなく、無作為に折ったものをある時点で手を止め、「あれっ、これは面白い表情だ!」として出来たもので、計算などどこにも無いからです。…あれっ、反論にならないかな?

みみずく

 この木の枝に止まった「みみずく」、まったく無作為の折りから出て来たもので、作為も計算もまったくありません。



幾何図形の、キューブが示す抒情性! 


「半魚人」と「かっぱ」

 キューブの(半切)の造形物を、あれこれといじっては、そこに表情を感じ取ることを楽しんでいる中で、ひょこっと見い出した「かっぱ(おりがみ新発見2 キューブの世界日貿出版社)に紹介。」と「半魚人(空想上の生き物の姿など、計算も何もあったものではない!)」。共に表情を発見した後で、(手)だけは意識してくふうしたものです。
 はて?こんなイメージ、コンピューターでプログラミング出来るだろうか?


「ねこ」と「ねずみ」

 キューブが二つくっついた「2連キューブ」という(7枚組みユニット)を、あれこれいじっていたら、それがあるところで「ねこ」に見えた! そしてさらにいじりまわしていたら、あっ「ねずみ」に見えた!(ねことねずみは、もちろん大きさの違う紙で折っています。)
 ともあれ、こんなイメージも、コンピューターじゃ得られないと思いますが…?

2017/08/12

山折り、谷折り

二つは一つ?

 基本的な「おりがみ(用紙)」は、片面にのみ色が付けられ、裏面は白です。そして一般的には、裏の白い面を上にして折り始めますが、そのとき手前側に折るのを(谷折り)後ろ、つまり向こう側へと折るのを(山折り)と言います。
 さて、1枚のおりがみを取って、楽しい実験的な「おりがみ」をご一緒にしてみてください。

1.おりがみを斜めに、裏の白を上にして置きます。
2.手前のかどをつまんで、向こうのかどに合わせたら、そっと空いている片手の人差指で二つのかどを合わせて押さえます。
  ここで、折ってはいけません。まあーるく(たわめる)だけです。
3.次に、空いている手の指で、まあーるくたわんだ山のところをそっと押さえ、
4.二つのかどを押さえていた指を離します。
5.すると二つのかどは離れて、右か左かのどちらかに動きます。
6.動いたかどは、別のかどに向かいますから、その向かったかどに重ねます。
7.二つのかどをきっちりと合わせて、まん中まで(=半分だけ)折ります。
  この折り目を(たて目)と言います。紙ひこうきなどを折るとき、この(たて目)
  が、ひこうきをまっすぐ飛ばすための知識となります。
  ここで格言、「紙の目(たて目)は、紙自身に聞け!」
8.白の面を上にして広げます。紙のまん中まで付いた(たて目)をまっすぐ手前にし、
9.上側の左右のかどを2等分して、この(たて目)のところまで、(Y)の字のように
  なるような(谷折り)の線を付けます。
10.3本の谷折り線が付いたら、色の面を手前にして(たて目)に角度をつけて、そこで立てます。

 すると、3本の谷折りは、(山折り)の線になっていますね。つまり(山谷)は同じものを、どちら側から見るかで分かれるわけで、結局は同じ一つのもの。
 でも実際には、一つの面に対して、山、谷は組み合わされて使われますから、区別されることになりますね。

 ところで今折ってくださったもの(下の写真のもの)、よく見ると3つの(曲面)が現れているでしょう!
 そしてこの形に、イメージを凝らすと、…「ふくろう」か「ねこ」かに見えませんか?
こんなくふうのことを、「半開折りによるイメージ・ゲーム」と名付けた、もっともイージーなくふう法です。

三つに分けられた面は、どれも曲面だ。
わずか3本の折り目が、ほら!みみずくや猫のイメージを!

2017/08/08

奴さんとサイコロ

「奴豆腐」に「賽の目」

「やっこさん」は、「おりづる」や「お三方」と並んで(おりがみの代名詞)ともされる伝承作品ですが、その「奴(やっこ)」という言葉には、実にいろいろな意味があるようです。
 まあ第一の意味は、江戸時代、大名行列の先頭で毛槍を振っている、髭を生やして派手な法被を着た武家の召使いのことです。おりがみでの「やっこさん」はこの姿を表現したものですが、おりがみの歴史研究の第一人者であられる岡村昌夫先生のお調べを伺うと、「やっこさん」の名で記録されたものより前に「奴凧」があり、そしてその前には「雀踊り」の名での記録があるとのこと。
 さらには、既に「サイコロ、すなわちキューブの魅力」の項でご紹介した、最古級の資料「欄間図式」の中では「こもぞう=薦僧」という名となり、それは時代が下がると「こむそう=虚無僧」となるのですが、この名の変遷はあくまでも「おりがみ」でのもの。

 今ここでは言葉の意味を知りたいとて辞書で見ると、「男だて→旗本やっこ、町やっこ」「遊女などで“男だて”ふうなふるまいをすること」…ともかく、例えば広辞苑などで見てもらえばお判りの通り、実にさまざまな意味があるのです。

 さてここで、実に面白いのは、「やっこ豆腐」の言葉で、これは豆腐を四角に切ることを意味し、…すると、「豆腐を“賽の目”に切る。」の言葉から、なんと!やっこさんは、豆腐を通して(サイコロ)と結び付くんですね!

 こんなことを発見しても、別に何の役にも立ちませんが、面白いと思いました。ただそれだけの話です。でも私ほどおりがみの「やっこさん」のことを愛好し、そして多くの発展のくふうをした者は居ないようですし、サイコロ=キューブの探求を楽しんでいる者も居ないでしょう。それだけは言いたいですね。

「やっこさん」が「箒に乗った魔女」に変身!


2017/08/07

ファンタジー作品の追加公開をしました

下記作品の追加公開をしました。

・長編ファンタジー「昔、始まりの物語」 第二章「オグル」

お楽しみいただけたら嬉しい限りです。

ページ右側のebooks欄より、PDFでご覧いただくことができます。

2017/08/04

悪魔登場!

 1980年のことです。伏見先生よりのお声掛りにて、日本経済新聞社が発行している雑誌「サイエンス」に、最新のおりがみのことを紹介する小冊子の付録を付けたいとの依頼が来たので手伝ってほしいとて、名誉な仕事をさせていただくことになりました。
 本文24ページの「おりがみの科学」というB5判の別冊付録で、10月号にそれが実
現されました。そしてここには、芳賀和夫教授の「芳賀定理折り」、三浦公亮教授の「地図の新しい畳み方、いわゆる“ミウラ折り”」、戸村浩氏の「対数らせんの造形」、伏見康治先生の「飛行つる」…などに並んで、前川淳さんの「(5本指を持つ)悪魔」も紹介されることになりました。

 現代おりがみ史の中で、(設計するおりがみ)との、論理でのくふう法の出発点を示す作品で、その(お披露目)に関われたことを今でも嬉しく思っています。ただ、このことに関して、少々冷や汗ものの出来事があります。それは、日経新聞社に来てくれとのことで、当時10歳の息子を連れて伺いましたところ、複数の記者に囲まれ、大きなおりがみを渡されて、『この場で(前川悪魔)を折って見せてくれ。』となったのです。

 まあ、少し前に撮影用のものを折っていましたから、大丈夫とは思いましたものの、なにしろこの時点では最高難度の作例とて、恥をかくことになるか?の不安を覚えたものでした。でもまあなんとか4、50分程の時間にて無事折り終えたことです。この間、息子は女性記者が遊んでくれていたようで、父の奮闘の様子は見ていなかったようです。
 でも今そんな彼が手伝ってくれて、かくブログをやれていることを思うとき、前川悪魔を思い出したわけです。なおこの別冊付録には、展開図のみで折り方の紹介はありませんで、折り図にての紹介は「ビバ!おりがみ サンリオ 1983年刊」です。

サイエンス別冊付録
明るさを嫌う悪魔は、あまり鮮明にしないでおこう!