驚きの(新世界)
まずタイトルの「彩竜紙(さいりゅうし)」とは、長崎市の田島純雄さんの開発になる紙のことで、具体的に説明しますと、「雲龍紙(うんりゅうし)」という伝統の和紙に、ある処理を加えることで、これまでちょっと(折り難かったところを、すっきりと気持ちよく“折れるようにした”)というものです。
和紙のことをご存知の方なら、「雲龍紙」にはところどころに(厚い繊維)が入っていて、それが(雲龍)の名前にふさわしい(風合い)を生んでいるのですが、折るときにはそれがけっこう(折り難さ)となっていた。
そのような和紙の(おりがみとした場合の弱点)を、特殊処理により(おりがみとして折りやすい素材)とされるという発明です。
同じような発明を「彩典紙(さいてんし)」と名付けられた紙でもされていますが、それは「典具帖(てんぐじょう)」という、極薄の和紙に(しっかりとした“コシ”を与える処理)をされたものです。
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彩竜紙で折った「スワン」です。
スワン=白鳥なのに、色紙で折っ
たのは、ペア感をだしたかった?
いえ、単純にきれいだったから。 |
ところで、田島さんの(おりがみに向けての開発)の主眼は、実は、折ったものを窯で焼くと(陶磁器)となるという素材です。従来の同様な試みでの素材に生じた(ゆがみ)が抑えられて仕上がる「彩陶紙(さいとうし)」と、そのゆがみを(ゼロに近づける)ための「ガラスの粉」の開発にあるのです。
一般的に、(陶芸用の紙)で折ったものをそのまま焼くと、それが(おりがみ)の場合では、必ず厚いところと薄いところとが現れるわけで、それが(ゆがみ)に繋がります。
そこで田島さんはこれを防ぐために、(塩釜料理=魚などを塩ですっかり包んで焼くという調理)のように、ガラスの粉に包み込んで焼けば(ゆがみ)は防げるだろうとお考えになり、そしてその狙い通りに成功されたのでした!
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彩陶紙
田島さんが運営される「おりがみ陶芸
センター」で焼成してくださった「月
とうさぎ」ですが、千度以上の高温で
焼かれたものと聞いています。
ただこの素材は、あまりに繊細に過ぎ
る上に、電気窯が必要とて、一般的と
は言えないでしょう。でも、こうして
出来たものは、永く残りますね。
また水で洗うことも出来ますね。 |
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彩陶紙には(千代紙柄)も有り
そのまま模様が焼き付けられる。 |
ところで田島氏のことは、私は教わったことが多過ぎて簡単にはご紹介出来ない方ですが、忘れられないエピソードの一、二をご紹介します。
まず一つは、(彩陶紙の原材料)からそれを粘土細工のように形成して、「蓋付の容器」にし焼成したものに、和紙に包んだ食材を入れて電子レンジでチンすると、なんと!その食材の本来の美味が、調味料を一切使わずに目一杯発揮される!との(調理器具)の発明です。野菜でも魚貝類でも、果物でも、本当においしくなるから不思議です!
さて、おりがみでイタリアからご招待をいただいた折、この田島さんの発明をご披露したいと望み、パドバ大学の藤田文章先生のご協力をいただき、イタリアおりがみ協会の大会でのアトラクションとして、この容器のデモンストレーションをさせていただくことになりました。イタリア、アメリカ、そしてドイツの何人かの女性の皆さんのご協力もいただき、食材の買い出しから電子レンジの手配など大いに助けていただいたことです。
ここで藤田先生は科学者らしく、『本当にこれが食材を生かすかどうかは、ふつうの陶器での容器との比較でやってみるべきだ!』とて、もちろんそのようにしました。…そして確かにその素晴らしさが、皆さんの味覚判定で確認されたのでした!
グルメの国イタリアの皆さんが認めてくれたのですから、これは大感激のことでした。
さて田島さんから教えていただいたことで何よりも大きな驚きとなったもう一つのことは、例の(ガラス粉)が、(籾殻)を焼くことで得られたというお話でした!
ガラス、それは(無機物)でしょう? 一方(籾)は言うまでもなく植物ですから(有機物)ですね。その有機物を焼いたら、田島さんが教えてくださったところでは、『(ガラス)が籾殻の過半数(60%と伺ったか?)に及ぶ量が取れた!』
有機と無機とは、一体何なのでしょう? まあ人間にしろどうぶつにしろ、焼けば(炭素=灰)で、…(炭素)って有機か無機かよく知りませんが、私には実に驚きのお話!
世の中に溢れている(常識の非常識)。翻ってこの世界って(うまいこと出来ている)んですね! ともあれ田島さんは、多くの驚きの新世界を見せてくれる方です。
備考:『籾殻を焼いて(ガラス粉)を得た』ということについて、記憶力が朧になってきた私には、…それって、(珪素=シリコーン)と伺ったようなおぼろな記憶もあり、ガラスとシリコーンは別物ですから、…ともかくこういう方面にはまったく無知な人間ですから、正直よく分かりません。でもともかく、私があまりはっきりと真実を語っては、企業秘密の漏洩にもなりかねませんので、曖昧なままで話しました。ご了解あれ。