2019/03/21

消える名前と残る名前

「つの香箱」、「奴さん」、…そして、

つの香箱
この(つの)部分には、左のような折り
の装飾をした例も伝承されていますね。

 まずはこの作例で(つの)の語を外して「香箱」というのを広辞苑で引いてみる。『香を入れる箱。香合』。古い歴史に彩られた奈良や京都でなら、こんな言葉も生きているのかも知れませんが、私には判らない。ただ、その造形はとても魅力的です。
 でも「つの香箱」? それって、具体的なモデルとして、現実に存在するもの?
 おりがみの作品名には、結構なぞが多いのです!

 続いて「奴さん」は十分よく知られた名前ですが、もし小さい子供から、『奴さんってだーれ?』と聞かれて、あなたはどう答えますか? 私にはすごく難しい問題です。

 さて「奴さん」からの関連で、まったく同じ造形を呼ぶ名称として有る「薦僧(こもぞう)」となると、もうそのなぞはきわめて底深い! 私は当初、この名前は「虚無僧(こむそう=奴さんを縦に二つ折りして、顔部分を引き出して笠にした形、大正の詩人金子みすゞは、“折紙あそび”と題した詩で、この作品名をあげている。)」のことかと思っていたが、岡村昌夫(おかむらまさお)先生と高木智(たかぎ さとし)氏の両先輩は、(笠の形態)などから見てもまったく別物だとの教えです。

 しかし、広辞苑では『虚無僧の異称』とあるのですが、両先輩共にこれとは見解を異にされておられるわけです。(有名な辞典であろうとも、闇雲に信じてはいけないと!)
 浅学の身ながら、私はいろいろと考えまして、「虚無僧」でないのなら、言葉は悪いですが、(おコモさんのような僧のこと)で「コジキ坊主」のこと?、と思った。 そして高木さんには半ば賛同を得た!
 正直な話、この言葉の意味するところを深追いすると、なんか恐ろしい闇に出会うかも知れないような妄想を抱きました!

 なおこの作品名は、大岡隼人(おおおか はやと)という人が、亨保19(1734)年に著した「欄間図式(らんま ずしき→この資料の様子はこのブログの最初の方の、(サイコロ、すなわちキューブの魅力)の項で示しましたね。」という欄間の図案集の中の(折形)と題された、おりがみデザインに示されているところからのものだけのようです。 

 でもまあ、「虚無僧」ですら死語になりつつある現実から、「薦僧」の語が残ることはないと思われる。それにしても、部屋の装飾としての(欄間)に、「コジキ坊主」の姿を飾りますか!?

「やっこさん」は、その正確な意味は判らなくても、その造形についての固有名詞として残るだろう、とそう思う。
 ただ、貴族や武士の衣装である「袴(はかま)」を、召使の身分である「奴さん」が履くのはおかしいことなので、もし「袴」を履かせたならば、「さむらい」という作品名にすることを提唱したい。(下の写真参照)(こんな視点を得たのは、十数年前のことで、それ以前には、平気で「やっこ」に「はかま」を履かせていましたよ。)

 次に、「足付き三方」というのがある。これは、おりがみ作品としてはしっかりその造形が伝承されているが、前の項で解説した通りその実際がよく判らないが、足の付かない「お三方(おさんぼう)」はよく知られている。

 なお私には「足付き三方」は、(どうぶつの4足表現)に結び付いて、大いに活用している折り型のものです。いずれにせよ、古人が見付けた楽しい造形は多く残ってほしいとの願いから、それらの魅力を現代なりにアピールしたいのです。(下の写真参照)

 他に「大砲船(たいほうせん)」「切り子とうろう」…なんだか影の薄くなった名前は多く有るようで、さみしい!

 まあ、そんなさみしさを打ち消すためにも、上記の作品たちに新しい魅力を付け加える試みのものを考えて行きましょう。で、そんな私の思いからの試みを下に紹介します。

説明の難しい「奴」より、
いっそ「はかま」をはかせての
「さむらい」としたらどうでしょ
うかねえ?         

「足付き三方」の(足)をどうぶつのそれに
見立て変えして収穫した「いぬ」ですよ。

「つの香箱」の高さを変えて見た。
こんな試みも、それなりに楽しい。
なお、いちばん手前が正態で、こ
れを平面につぶしてみると、…  
「十字星のポチ袋」となり、…
これを上からそっと吹くと、よ
く回る「吹きゴマ」になってい
ましたよ!         
なお、お札を入れるには、1辺
が19cmくらいのサイズが必要
ですから、15cmサイズなら、
コインを入れましょう。   
         
「大砲船」とは奇妙な題名!
でも、このぶっそうな名前の
作品を、見立て変えしようと
考えて、次のような「はと」
のイメージを得ました!  
戦争の作例を、平和の作例へ
とイメージチェンジ!   
これ(くふうの醍醐味)!
大砲部分を(尾羽)に、
そして二つのかどの(へさ
き)を(足)に、(とも)
を(あたま)に見立てるこ
とで、「はと」の姿を! 
「切子とうろう」は、まず
は「お化け提灯(または、
目玉提灯)」と見立て、そ
して次は、前の項での「銀
河10人衆」の一人に見立て
変え!?        

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